
本稿では、2025年に開催された大阪・関西万博のパークアンドライドについて、運営の実態を整理しながら、利用者数が想定より少なかった理由をまとめます。
パークアンドライドとは
パークアンドライドとは、目的地(都心)周辺部に車を止めて公共交通機関へ乗り換えて、目的地へ行く移動方法です。
これにより、都心部への自動車流入の抑制を図り、都心中心部の交通混雑を緩和することが期待されます。
2025大阪・関西万博では、会場周辺での交通渋滞を緩和することを目的に、パークアンドライドが採用されました。
なぜうまくいかなかったのか
10月7日、大阪・関西万博の運営収支が230億〜280億円の黒字となることが発表されました。しかしその一方で、パークアンドライド事業は約50億円の赤字が見込まれています。
読売新聞オンラインでは次のように報じられました。
駐車台数は3か所で計約1万1000台。万博協会によると、赤字を出さないためには、夢洲の障害者用駐車場(200台)も含め1日当たり6000台超の利用が必要となる。しかし、万博協会の集計(4月13日~9月9日)によると、1日で最も多かったのは、開幕以来最多の20万9837人が来場した9月6日の5695台だった。
引用:読売新聞「万博パーク&ライド「数十億円」赤字見通し…輸送力不足で実際の受け入れ能力は駐車区画の6割だけ」
つまり、想定よりも大幅に利用者が少なかったということです。
では、なぜ利用が伸びなかったのでしょうか。報道やSNSの声をもとに、その理由を整理します。
1.料金が高かった
パークアンドライドの基本料金は、往復のシャトルバス代を含めて5,000〜5,500円に設定されていました。
日程や時間帯によって加算や割引がありましたが、全体として割高に感じる人が多かったようです。
そのため、大阪メトロ中央線沿線の割安なコインパーキングに車を停め、電車で会場に向かう来場者も見られました。
2.公共交通利用が多かった
こちらの記事によると、万博来場者数の7割以上が中央線を利用していたとのことです。

愛知万博(2005年)では、多くの来場者が自家用車で訪れ、会場周辺で渋滞が頻発しました。
それを踏まえ、今回の大阪・関西万博ではできるだけ公共交通機関での来場を促し、渋滞を起こさないことを目指していました。
愛知万博と比べて大阪の交通事情が異なったことも影響し、公共交通の利用は想定以上に増えましたが、パークアンドライドの需要は予想を下回りました。
3.広報の伝え方
前述の通り、大阪・関西万博では公共交通機関での来場が推奨されていました。
広報資料や公式サイトにもパークアンドライドの案内はありましたが、「原則として電車・バスなどの公共交通機関をご利用ください。万博会場への自家用車は乗り入れできません」と記載されており、“車では来てはいけない”という印象を与えた可能性があります。
その結果、パークアンドライドの存在や利用方法が十分に浸透せず、利用者が伸び悩んだと考えられます。
4.仕組みが複雑
パークアンドライドを予約する際の手続きが分かりづらく、手間がかかるという声が多くありました。
「チケット購入が面倒」「途中で画面操作が分からなくなった」といった意見がSNSなどで見られ、
結果的に利用をためらう人が出たとみられます。
初めて利用する人にとってはハードルが高く、利便性を感じにくかったと言えます。
5.時間が読めない
パークアンドライドのシャトルバスは、駐車場の予約状況に応じて運行されていたため、事前に固定の時刻表が用意されていませんでした。
そのため、「シャトルバスの運行時間が分からず、パビリオンの予約に間に合わないのでは」と不安に感じる人が少なからずいたようです。
さらに、シャトルバスへの乗り換えや渋滞の影響で所要時間が不確定になることもあり、事前予約制の会場との組み合わせには向いていなかったと考えられます。
利用者の少なさは問題ではない
パークアンドライド利用者の少なさを問題視する報道も見られますが、実際には利用者が少なかったこと自体が問題だったわけではありません。
利用者が少ない分、会場周辺の渋滞は避けられ、公共交通機関の利用促進という本来の目的も一定程度達成されています。
赤字になった主な要因は、パークアンドライドの需要を過大に見積もっていた点にあると考えられます。
まとめ
大阪・関西万博のパークアンドライドは、想定より利用者が少なく、結果として赤字となりました。主な要因としては、
- 料金が高く感じられたこと
- 公共交通機関の利用が想定より多かったこと
- 「車で来てはいけない」と思われる広報の影響
- 予約の仕組みが複雑で、初めての利用者にとってハードルが高かったこと
- 会場までの所要時間が分かりにくく、事前予約制の会場との連携が難しかったこと
が挙げられます。
今後の大型イベントでは、この経験を踏まえ、都市ごとの交通事情に応じて、料金設定や広報、予約システムの工夫が求められます。

都市部を中心に利用が広がりつつあるパークアンドライド。万博での課題を活かして、スムーズなアクセスを支える存在になることを期待します!

